作り直し

 お店の情報も10万件を超え、アプリ側での細かな調整をしつつ、大まかな実装がほぼ完成したのは、11月に入った直後。

 2025年11月8日。務めていた会社を退職することになる日だった。
 会社で仲の良かった人達には事前に話してはいたが、この日が訪れたことは、自分にとってとても大きな事件だった。

 そもそも、11月8日まで在籍していた会社には様々な人との出会いなどの奇跡が重なりあって、文字通り奇跡的に入社ができたというのに、自分のやりたいことをすると決めたとはいえ、こんな終わり方で自分自信が納得できるのか?という葛藤はまだ続いていた。

 文字通り、自分の中では、人生を左右する大きな岐路であり、その選択で未来は大きく変化することになる。そうわかっていたが、結果、退職ということになってしまった。しかし、これも運命なんだろうなと受け止めることにした。

 前々職も体調を崩して退職を余儀なくされたが、結果、前職の会社に入れたという奇跡が起きたから、なんとなく心や体が病んだときは、次のステップへの休憩と思うことが自然とできるようになっていた。そして今はこのアプリが心の支えになっている。

 しかし現実の自分は「無職」であり、収入はゼロ。その状況を正しく理解すればするほど心が病むので、現実逃避をしながらアプリの完成を進めて心を整える日々が続いた。

 アプリの機能が整ってきて、リリースの道筋が見え始めた。あと少し手直しすれば完成だなと思い、意気揚々と友達に見せたところ「分かりづらい!なぜ会社を登録してからじゃないと株主優待が登録できないの?」と言われ、自分では普通のことだと思っていたことを完全否定されてしまった。

 応援したい会社があるから会社の株を保有する。それに対して会社は株主優待を提供する。当然のロジックなので、俺は疑いもせずにそのロジックでアプリを作っていたが、「優待を管理するアプリなら、優待を管理するロジックでないとおかしい」とのダメ出し。

 たしかに、優待を軸にアプリを作るのであれば、どの企業から優待券(特にQUOカードや選べる系の電子マネー)を頂いてもいい。結果的に自分の手元に何があるのかが分かればいいのであって、企業を応援するかどうかはその人次第。

 完成間近だと思っていたアプリだったが、もう一度根本から修正することにした。

 いったんリリースも考えたが、身近な人が受け付けられないなら、きっとみんなに受け入れられル訳がない。ということで、株主優待を軸にしてプログラムを構成し直すこと1週間。それまでとは全く違うアプリになった。

 その状態を友達に確認してもらったところ「うん、いいんじゃない? あとは…」と、さらに要望が出てきたが、ひとまずこの形に落ち着くことになった。

 アプリ名は何にしようかな?とずっと考えていたのだが、幾つかの候補から最終的に「優待くらし」に決まった。

 心を病んでいたり体を病んだときも、株主優待で外食をする事で、少し軽くなった気分になれた、こんな自分と同じように株主優待で救われる人がきっといるはず。このアプリがどんな状況でも、みんなの暮らしの中に溶け込んで、優待で生活や心が豊かになればいいなという思いを込めた。

 カラーは暖色系にしたいと決めていたのと「株」と分かるものということで友達にアイコンを作ってもらったのだが、とても素敵なものができあがってきた。

 このアイコンがインスピレーションになり、地図にピンを表示していたのをかぶに変えてしまった。この辺りはやり過ぎ感はあるかもだけれど、GoogleMapにピンをうつというWeb的なノリが楽しくないという俺のエゴでこうなったんだけれど、まさか、このピンがPDFだなんて信じられないよね。

 ってことで、ようやくゴールが見え始めた時には、すでに11月が終わろうとしていた。